昭和39年生まれの私が少年だったころ、
近所の駄菓子屋の棚に並ぶ
『アポロチョコ』や『ハートチョコ』、『チロルチョコ』といった
大量生産のチョコレート菓子は、
私の大のお気に入りだった。
その反面、生意気なことに
ウイスキーボンボンやひと口チョコという
上等な大人のチョコレートもこの世に存在する、
ということも知っていた。
一度だけ間違ってウイスキーボンボンを口にした時、
口の中いっぱいに、ウイスキーが
あふれ出した時のショックは、今も忘れられない。
そして、ベタっとした柔らかいキャラメルが
中に入った、甘ったるいひと口チョコの味も。
そうこうするうち、
私は調理師学校を卒業してパティシエ見習いとなり、
初めて本物のボンボンショコラというものに出会った。
外側は絹のようにマットできめ細やかな
コーティングチョコレートで覆われ、
中からは、とろけるガナッシュがあふれだす。
濃厚なカカオやナッツの薫りが、
どっと洪水のように押し寄せると、
ほのかなリキュールの余韻が後を引く。
それは今までアポロやハートやチロルしか知らなかった私の感覚を、
瞬時で沸き立たせるほどの、熱いカルチャーショックだった。
たった一粒の小さなチョコレートが、
こんなにも深く、豊かな感動を与えてくれるとは…!
そしてその時、はじめて私は知った。
ヨーロッパの伝統が育んだボンボンショコラこそ、
私が今まで食べていたアポロやハートやチロルの原点だったことを。
それから私の興味はチョコレートからショコラへ、
流行菓子からオリジナルへと、原点回帰の旅を始めたのだ。
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