eccentric chocola talk不易流行〜コヤマススムのエキセントリック・ショコラ・トーク

 
第二話銀のチューブに詰まった、伝統と遊び心

昨年、パリを旅した時のこと。かのピエール・エルメ氏の後任として、
『フォション』で腕をふるった若きパティシエ、
セバスチャン・ゴダール氏が独立後にプロデュースした店を訪ねてみた。
老舗デパート『ル・ボン・マルシェ』の2階にある
彼の店『デリカバー』は、シンプルながらもカラフルなソファと
白くライトアップされたカウンターが印象的な超モダン空間。
老舗のパティスリーとは趣きのまったく異なる
その自由で洗練された空気感に、私は圧倒された。

しかし、そこで私は、意外な物を発見してしまった。
それは、銀色のアルミチューブに入ったショコラである。
“パータ・タルティネ”と名付けられたそのチューブは、
白い上品なラベルを貼られ、すました顔してショーケースの中に鎮座していた。

その時、私の頭の中を走馬灯のように巡ったのは、
幼い頃、毎日のように10円玉を握りしめて通った駄菓子屋の光景。
そこには、おなじみのヒモ付きアメやカレーせんべいや、
ベビースターラーメン、そして、あの懐かしい
“チューブ入りのチョコレート”があったのだ!

もちろんゴダール氏は、味のレベルはともかく、
かつてそんな代物が日本に存在していたとは、知るよしもないだろう。
それとも、フランスにも同じような駄菓子があったのか??
いずれにせよ、思わず私はその場で「やられた!」と呟いてしまった。
何だか、自分のオカブを取られてしまったような気がしたのだ。
フランスでも指折りの格式を誇るパティスリーの出身者が、
ここまで遊びを効かせたユーモラスなショコラを作るとは

しかし、よくよく考えれば、30年以上も前に
こんな商品を考えついた日本人も、全くもって大胆不敵。
我々の先輩が、いきなり発想を飛躍させることができたのは、
“ショコラの伝統”という文化的な足かせがなかったからだろう。
そして、それはかく言う私自身のポジションでもある。

これから、私が「キャトリエンム ショコラshin」において実現したいのは、
ショコラティエの基本に忠実でありながらも、
日本人ならではの発想を生かした、“第4のショコラ”。
あの絵の具のチューブに負けず劣らず、
サプライズのあるショコラをつくり出すことなのだ。

 

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