eccentric chocola talk不易流行〜コヤマススムのエキセントリック・ショコラ・トーク

 
ベルギー進化論〜挑戦し続ける伝統の担い手たち〜


ベルギーは、言わずと知れた世界のチョコレート王国。
九州よりもやや小振りな国土の中に、ゴディバ、ノイハウス、レオニダス、ガレーetc。
世界的に有名なショコラティエが多数存在し、いずれも「ベルギー王室御用達」との御墨付きを得ている。


それだけ深遠なるチョコレートの歴史と文化を持つ国だけに、さぞかしいろいろな個性を持つメーカーがあって、中には驚くほど斬新なところもあるに違いない…と思うだろうが、現状は全く異なる。
ベルギーもやはりヨーロッパの他の国々と同じく、基本のボリュームゾーンはあくまでもコンサバティブ。
伝統をしっかりと守り続ける正統派が多数を占めているのだ。


ところが、昨年末、久々にベルギーを訪れて驚いたことがあった。
私が修業時代にお世話になった歴史ある銘店「フェルベッケ」が廃業していたのだ!
当時、「フェルベッケ」にいらっしゃった最高のショコラティエと謳われたポールさんにも残念ながらお会いすることができなかった。
その時の私のショックたるや、言葉では表現し得ない。
久々に訪れることができると思っていた思い出の店「フェルベッケ」の喪失。
そして、何よりも私の偉大なるチョコレートの師匠との別離。


私は文字どおりガックリと肩を落としつつ、気ののらぬまま、次なる目的地へと向った。
そこは「チョコレートライン」という老舗で、もともと観光客にチョコレート製造現場を見せるための観光アトリエだった。
ところが、その店が目を見張る変化を遂げていたのである。


現在、「チョコレートライン」のシェフを勤めるのは代替わりしたばかりの2代目で、実家の商売に携わる前はフレンチのシェフをしていたという男だ。
彼は、私がパティシエだと知るや否や、熱心にいろいろな新作を勧めて来た。
「これはオリーブオイル、これはトマト、そっちカレーであれはタバコ…」
そこで見たのは、今までの常識では考えられない素材を用いた
斬新なボンボンショコラたちだった。しかも、そのどれもが意外にも旨い!


ほんの数時間前まで意気消沈していた私は、少しうれしくなった。
あまり期待もしていなかった観光客向けの店に、意外なダークホースが存在したのだ!
店内には他にも小さなペンキ缶の中に入ったチョコレートがハケとセットになっていたりと、味だけでなく商品の意匠や提供のスタイルもかなり斬新なものが目立つ。
はたして、彼の意図がどこまでこの保守的な地で受け入れられているかはわからないが、
今、ここでピエール・マルコリーニ以来の新しいムーブメントが生まれようとしていることは確かだ。
この旅での過去との別れ、そして新しい気鋭との出会いは、
間違いなく私自身にも大きなインスピレーションを与えてくれた。




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